研究部門

ナノ構造制御した有機薄膜の新規作製プロセス開発

フォトクロミック色素の可逆性を利用した新規印刷プロセスの開発

印刷技術で有機薄膜デバイスを製造するためには、有機半導体材料の“塗りわけ”と“塗り重ね”が不可欠となります。私たちが提案するフォトコンタクトプリンティング法とは、スタンプ上にインクを塗布する際やスタンプから膜を剥離する際にフォトクロミック色素の異性化に伴うぬれ性変化を利用することでスタンプを最適な表面エネルギー値にコントロールしながら印刷する方法です。具体的には、スピロピランを配したスタンプに、紫外光を照射すると濡れ易い状態(メロシアニン体、開環)になります。このメロシアニン体の状態であれば、スタンプ上にインクを塗布して成膜することができます。一方、可視光を照射(又は加熱)することでスタンプ表面は濡れ難い状態(スピロ体、閉環)に変化します。このスピロ体であれば、スタンプ上に形成された膜は容易に転写することができます。光を照射する部分を限定することで容易にパターニングが可能であり、現在、プリンテッドエレクトロニクスの共通基盤技術を目指して研究に取り組んでいます。

フォトクロミック色素を用いた表面エネルギーの制御とパターニング

マイクロ流路を用いた塗布・乾燥プロセスにおける結晶成長ダイナミクス

塗布・乾燥過程は、有機ELや有機トランジスタ、有機太陽電池などのデバイスの製造に用いられており、プリンテッドエレクトロニクスでは極めて重要なプロセスと言っても過言ではありません。一般に乾燥が進行すると気化熱が発生し、溶媒の対流や材料の凝集などが同時に起きます。こうした複雑な素過程を経て薄膜が形成されるため、薄膜デバイスの再現性も乏しいといった問題があります。基礎的な塗布・乾燥過程を理解し、コントロールすることが、プリンテッドエレクトロニクスの早期実現に不可欠となっています。私たちは、シリコーンエラストマーと基板によって形成される閉鎖空間をマイクロ流路としてインクを毛細管現象で輸送・供給する成膜法を開発しました。乾燥過程を三次元から一次元へと低次元化することで、複雑な素過程を単純化し、結晶成長ダイナミクスの解明に取り組んでいます。

毛細管現象による溶液の注入・輸送

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