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2次元ナノチャネルを有するナノシート積層膜の開発

グラフェン酸化物(Graphene Oxide, GO)は、分子やイオンの選択的透過を可能とする2次元ナノチャネル構造の構築に適した多用途材料です。当グループでは、GOを用いた層状膜の構造的・化学的特性を精密に制御し、安定かつ高効率な分離機能を実現することを目指しています。化学的変換および分子挿入手法を組み合わせることで(例:Agナノ粒子の挿入、図1)、層間距離や孔壁の化学的性質を分子レベルで制御し、水系や加圧条件下でも構造を維持できる非常に安定なナノチャネル膜を実現しました。種々の修飾剤や挿入分子の体系的比較を通じて、ナノスケールの閉じた空間と界面の化学的性質の共同作用によりGO積層膜の安定性と機能性を決定する仕組みが明らかになり、次世代の高性能水処理・イオン分離膜設計の指針を示しています。

図1 ナノチャネル膜中におけるAgナノ粒子挿入の制御 (Chem. Eng. J., 2023, 465, 143005)

 

さらに、形成されたナノチャネル内における水およびイオンの輸送機構の解明にも取り組んでいます。構造的な篩分け効果と静電相互作用の相乗により、サブナノスケール特有の分離挙動が発現します(図2)。最近の研究では、構造によってはイオン選択性が主に電荷相互作用によって支配されること、また圧力印加下におけるチャネルの変形の回復が選択的輸送の維持に重要な役割を果たすことを明らかにしました。これらの知見は、2次元ナノチャネル空間中におけるイオン輸送の基礎的理解を深めるとともに、分子およびイオンの精密分離を可能にする次世代膜設計への指針を与えるものです。

図2 ナノチャネル内のイオン輸送を支配する要因 (Nano Lett., 2023, 23, 6095–6101)